ヴァイオリン・ソナタ イ長調の楽章(K. 526草稿)、K. 526a
沃尔夫冈·阿马德乌斯·莫扎特

モーツァルトの《ヴァイオリン・ソナタ イ長調の楽章》(K. 526a)は、ウィーン時代(1787年)に書かれた短い未完の草稿で、完成作《ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K. 526》と関係があると見られている。断片としてのみ伝わるこの一頁は、31歳のモーツァルトの作曲の手つきを一瞬だけ垣間見せてくれる。
現在わかっていること
K. 526aは、イ長調によるヴァイオリンと鍵盤のための1ページの断片として残っている。不完全な「器楽楽章」として伝承され、独立した作品というよりも、イ長調ソナタK. 526に付随する補助的な草稿として扱われるのが一般的である[1]。現存する資料状況からは、楽章全体の構想を確実に復元することはできない。残された音楽は、モーツァルトが素材を試しつつも、演奏可能な完成形の連続へと押し進めないままに留めたスケッチとして読める。
通常の年代比定と場所の推定はウィーン、1787年で、この年にモーツァルトはK. 526そのものを完成させている[2]。オペラをはじめとする重要な仕事に挟まれ、器楽作品でも目覚ましい充実を示したこの多産な時期、鍵盤とヴァイオリンのパートナーシップは成熟し、対話的な均衡がとりわけ鮮やかになっていた。K. 526aもまた、同じ創作圏に属しているように思われる。
音楽内容
このページに書かれた音楽は、完結した小品というより、ソナタを思わせるレトリックの萌芽を示している。イ長調の開始主題が、きびきびと前へ進む音型とともに提示され、二つの声部が主題的役割を分かち合う(鍵盤に対するヴァイオリンの単なる伴奏ではない)書法がうかがえる[1]。断片は途中で途切れているため、終止の方針や転調の道筋を確定することはできない。しかし、その明るく外向的な性格は、K. 526の両端楽章に見られる、俊敏で洗練された古典派らしい表面と自然に並び立つ[2]。
[1] IMSLP work page for the fragment (catalogued as K.Anh.50 / K.526a), including the 1-page score scan and basic catalog metadata.
[2] Wikipedia overview of Mozart’s Violin Sonata No. 35 in A major, K. 526 (Vienna, 1787) for contextual dating and genre relationship.