ピアノのためのアダージョ ロ短調(断章)、K. 708
by Wolfgang Amadeus Mozart

モーツァルトの独奏ピアノのための《Adagio》ロ短調(K. 708)は、1788年初頭にさかのぼる短い未完の断章で、のちの《Adagio》ロ短調 K. 540のための初期草稿と広く見なされている。現存するのは19世紀の写しのみだが、モーツァルトが最も凝縮された鍵盤作品の一つを形づくっていく思考の過程を、稀に垣間見せてくれる。
判明していること
《Adagio》ロ短調 K. 708は、未完の鍵盤断章として残っているが、モーツァルト自筆譜ではなく、ウィーンの収集家アロイス・フックスが作成した19世紀の写しによって伝わったものである。モーツァルテウムのカタログは本作を「ウィーン、1788年1月〜2月」とし、調性と速度標語の組み合わせから、モーツァルトが1788年3月19日に自作の主題目録へ記載した完成作《Adagio》ロ短調 K. 540の、初期草稿である可能性がきわめて高いと注記している。[1] この断章は《新モーツァルト全集(Neue Mozart-Ausgabe)》で、独立したピアノ作品の一つとして校訂・収録されている。[2]
音楽内容
現存資料が一頁からなる写し譜ただ一つで、しかも途中で途切れているため、K. 708は演奏可能で完結した楽章というより、作曲上の「出発点」として聴くのがふさわしい。確実に言えるのは、モーツァルトがK. 540のような、十分に練り上げられ修辞的にも大きく展開する構想へ到達する以前に、すでに本作の根本的な表現の枠組み——Adagioのテンポと、異例なほど暗いロ短調という調性——を定めていたという点である。[1]
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[1] Mozarteum (Köchel Verzeichnis) entry for K. 708: source transmission (Aloys Fuchs copy), dating (Vienna, Jan–Feb 1788), and relationship to K. 540.
[2] Digital Mozart Edition (Neue Mozart-Ausgabe) table of contents for NMA IX/27/2 showing K. 708 as an *Adagio in b (fragment)* among the piano pieces.




