K. Anh.A 41

ピアノのためのAndantino 変ホ長調(グルック「Non vi turbate」による)(K. Anh.A 41)

par Wolfgang Amadeus Mozart

Silverpoint drawing of Mozart by Dora Stock, 1789
Mozart, silverpoint by Dora Stock, 1789 — last authenticated portrait

モーツァルトの変ホ長調の Andantino(K. Anh.A 41)は、グルックのオペラ《アルチェステ》にあるアリア「Non vi turbate, no」を短く鍵盤向けに編曲した作品である。作曲(または成立)は通常、モーツァルト34歳頃の1790年前後のウィーンに置かれるが、真作性や成立の具体的事情については不確かな点が残っている。

背景と文脈

1790年前後のウィーンで、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756–1791)は、宮廷に向けた公的な仕事――とりわけ同年後半の戴冠式オペラ《La clemenza di Tito》――と並行して、教授やサロン向け、鍵盤向けの音楽といった安定した私的需要にも応じていた[1]。変ホ長調の Andantino K. Anh.A 41は、クリストフ・ヴィリバルト・グルックの「Non vi turbate, no」(《Alceste》)に「よる」編曲として伝わっており、モーツァルト晩年のウィーンと結びつけて語られるのが通例である一方、学界や目録では真偽不確定、あるいは疑わしい帰属として慎重に扱われている[1]。とはいえ、グルックが選ばれている点は示唆的である。彼のオペラはウィーンの音楽文化において依然として生きた参照項であり、「Non vi turbate」自体も《Alceste》第2幕のアリアとして確認できる[2]

音楽的性格

変ホ長調で Andantino と指定されたこの曲は、抒情的で、声楽的発想に根ざした編曲として読める。単一のカンタービレな旋律線が前面に置かれ、伴奏は、歌い手がテキストのまとまりごとに息継ぎをするかのようなフレージングを支える形に整えられている[1]。ヴィルトゥオーゾ的な誇示よりも、均整の取れた運動、明快な和声の歩み、そして落ち着いた「オペラ的」旋律が重んじられており――これらはグルックの改革様式にふさわしく、家庭で奏される表情豊かな鍵盤の小品として音楽を効果的なものにしている。

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[1] Mozarteum Salzburg, Köchel Verzeichnis entry: “KV Anh. A 41 – Andantino in E flat (Christoph Willibald Gluck)” (cataloguing, attribution status, basic work data).

[2] MozartDocuments.org (documentary context; identifies “Non vi turbate, no” as an aria from Act II of Gluck’s Alceste).