「ニ長調の行進曲」(「Ein kleiner Marsch」)のインキピット(断片)K. 544
von Wolfgang Amadeus Mozart

モーツァルトの《「ニ長調の行進曲」》(「Ein kleiner Marsch」)K. 544 は、1788年のウィーンで構想された行進曲の、ほんのわずかに残った書き出しである。作曲者32歳の作。短い冒頭部分のみが伝わるこの断片は、儀礼的で戸外向きの様式を手際よくまとめ上げるモーツァルト晩年ウィーン期の勘どころを垣間見せる――しかしそれは、思考の途中でふいに途切れ、後が続かないまま残された。
判明していること
現存するのは、この構想された行進曲の冒頭のみである。ニ長調で書かれたインキピット(数小節ほどの譜面)で、伝統的に「Ein kleiner Marsch」という題名と結びつけられてきた。近年のカタログでは、混成の室内アンサンブル――フルート、ホルン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ――のための Marche in D と説明され、1788年のウィーン作品とされている。[1]
この断片は、演奏可能な完全なスコアとしてではなく、「行進曲の書き出し」として伝わり、Neue Mozart-Ausgabe では行進曲の付録類の中に印刷されている。[2] その短い記譜以上に、完成された続きが存在したこと、確かな作曲の機会、あるいは初期の演奏伝統を裏づける確実な証拠はない。
音楽内容
ごく短い範囲ながら、このインキピットは平明な行進曲の輪郭を示唆する。戸外や儀式用途にふさわしい明るいニ長調の開始で、堅固な低音の上に、明確で周期的な旋律が導いた可能性が高い。現存する編成(とりわけ弦に加えてホルンが含まれる点)は、社交的あるいは半公的な場で音を通しやすい、コンパクトで実用的なアンサンブルを好んだウィーン期モーツァルトの嗜好とも符合する。[1]
1788年――ウィーンで器楽作品に集中的に取り組んだ年――に位置づけてみると、この断片は演奏会用の作品というより、必要に応じて用意される実用的なアイデアとして読める。大きな仕事の合間にも素早く自信ある書き出しをスケッチし、状況が変わればそのまま放棄する、そうした種類の冒頭ジェスチャーだったのかもしれない。[1]
[1] Internationale Stiftung Mozarteum, Köchel-Verzeichnis entry for K. 544 (“Marche in D”) with basic catalog data and instrumentation.
[2] IMSLP: index page for the Neue Mozart-Ausgabe, listing “Beginning of a march in D major, K.544” in the marches appendices (p. 85).