ニ長調の旋律記譜 K. 720(ニ長調)
de Wolfgang Amadeus Mozart

モーツァルトの《ニ長調の旋律記譜》(K. 720)は、ザルツブルクで書き留められた(1772年)短い未完の鍵盤用メモで、自筆譜が現存し、作曲者の雑多な《Varia》の一つに分類されている [1]。16歳の年に当たるこの断片は、若き宮廷音楽家が様式と技法の掌握を急速に広げていった、きわめて生産的なザルツブルク時代と同じ期間に属する [2]。
背景と文脈
1772年のモーツァルトはザルツブルクを拠点とし、司教侯の音楽組織に新たに組み込まれたばかりだった。この環境では、多様なジャンルにわたって安定した作曲成果を求められた [2]。しかしK. 720は、通常の意味での「完成作品」ではない。モーツァルテウムのKöchel Catalogue Onlineでは、単に「ザルツブルク、1772年」と年代が付され、鍵盤用の項目として自筆譜で現存するものの、未完と記載されている [1]。実際のところこれは、演奏用に整えられた作品というより、個人的な音楽上の覚え書き――完成形の楽曲というより、譜面に固定された着想に近いものとして読める。
音楽的性格
残されているのはニ長調による簡潔な旋律スケッチで、ザルツブルク時代のより公的な鍵盤作品に期待されるような展開の広がりは備えていない [1]。それでも調性の選択は示唆的だ。明るい響きと鍵盤楽器にとって自然な音の鳴りをもつニ長調は、当時、素早く肯定的な音楽の思いつきを書き留める際の「基本」ともいえる調だった。1772年という文脈で(実際には「聴く」というより「読む」ことで)K. 720に触れると、モーツァルトが16歳にしてすでに、素材を素早く紙面に捕まえ、のちに磨き上げたり拡大したり、あるいはそのまま脇に置いたりできる主題や身振りの蓄えを維持していたことがうかがえる。
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[1] International Mozarteum Foundation (Köchel Catalogue Online) — work entry for KV 720: key (D major), dating (Salzburg, 1772), status (autograph; extant; uncompleted).
[2] Mozart & Material Culture (King’s College London) — biographical context for Mozart’s Salzburg position and activity in 1772 (including appointment in the Salzburg court music).




