K. Anh.H 11,15

3声のためのカノン ヘ長調(1つの声部による)「Heiterkeit und leichtes Blut」(K. Anh.H 11,15)

av Wolfgang Amadeus Mozart

Unfinished portrait of Mozart by Lange, 1782-83
Mozart, unfinished portrait by Joseph Lange, c. 1782–83

モーツァルトの《カノン ヘ長調》「Heiterkeit und leichtes Blut」(K. Anh.H 11,15、K. 507としても伝わる)は、1786年にウィーンで書かれた、ごく小さな3声のユニゾン・カノンである。コンサートホールのためというより、気の合う仲間内での歌唱を想定した音楽だといえる [1] [2]。自筆譜が残り、早い段階で写譜・出版もされたことは明らかだが、トマス・アットウッド関係資料と並んで流通した経緯があるため、現代の目録作成においては、モーツァルト自身の手になる作品としてどこまで確実に結びつけられるかが、時に判断を難しくしてきた [1] [3]

背景と文脈

3声のカノン「Heiterkeit und leichtes Blut」は1786年の作とされる。30歳のモーツァルトはウィーンで確固たる地位を築き、同時に公的な場、劇場、教育目的、そして私的な集まりなど、多様な場面に向けて音楽を書いていた [1]。このようなミニアチュールとしては伝承資料が異例に具体的で、ケッヘル目録には自筆譜(1枚物のスコア)と後世の複数の写しが挙げられているほか、早期印刷(1804年)や『新モーツァルト全集』への収録も記されている [1]

詞はドイツ語で「Heiterkeit und leichtes Blut」(「朗らかさ、軽やかな血(気分/活力)」)と題され、モーツァルテウムの記録ではゴットフリート・クリストフ・ヘルテルの作とされている [1]。同じウィーンの周辺で、モーツァルトは若きイギリス人音楽家トマス・アットウッド(ウィーン滞在は1785〜1787年)と密接に関わっており、このカノンはデジタル・モーツァルト版において、1786年のスケッチ/アットウッド関連文脈の中にも現れる [3]

音楽的性格

無伴奏3声(V1、V2、V3)のために書かれたこの作品は、ヘ長調のコンパクトなユニゾン・カノン(in unisono)である。ひとつの旋律線が3つの声部によって模倣され、順に入りながら歌われる [1] [2]。こうしたカノンは明晰さが生命線だ。旋律は自分自身と重なってもなお判別できるように形作られ、声部が一致する場面では和声がすっきりと「解決」する。

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歯切れがよく、ユーモアを帯びた詞の内容は、モーツァルト時代のウィーンにおけるこのジャンルの社交的機能にふさわしい。すなわち、私的なサークルで手早く歌える短い小品でありながら、作曲家の機転の利いた対位法的センスと、歌いやすい旋律への本能が垣間見える作品なのである [1]

[1] Internationale Stiftung Mozarteum, Köchel Verzeichnis entry for KV Anh. H 11,15 (“Heiterkeit und leichtes Blut”): dating, key, scoring, transmission (autograph, copies), publications (NMA references), and text attribution.

[2] IMSLP work page: Canon for 3 Voices in F major, K. 507 (alt. title “Heiterkeit und leichtes Blut”)—basic catalog data (key, year, scoring, language) and access point for scores.

[3] Digital Mozart Edition (DME), Neue Mozart-Ausgabe table of contents (NMA X/30/3: Sketches): lists K. Anh. H 11/15 within the 1786 sketch/Attwood-related context (Skb 1786c/02).