K. 422a

ニ長調のキリエ(K. 422a)

di Wolfgang Amadeus Mozart

Unfinished portrait of Mozart by Lange, 1782-83
Mozart, unfinished portrait by Joseph Lange, c. 1782–83

モーツァルトの《ニ長調のキリエ》(K. 422a)は、1787年に書かれた短い未完のミサ楽章で、断片として伝わっている作品である。古い文献ではザルツブルクの教会実践と結び付けて語られることも多いが、現存する自筆譜はむしろウィーンに関わることを示しており、本作は完成した曲の一部としてではなく、ミサ通常文の作曲に向けた晩年の孤立した書き出しとして聴くのがふさわしい。[1]

背景と文脈

1787年、モーツァルトは31歳で、主としてウィーンで生活し活動していた。宗教作品の作曲は彼の創作全体の中では比重こそ小さいものの折に触れて現れ、継続的な宮廷職務というよりは、特定の委嘱や個人的事情に促されることが多かった。K. 422aはきわめて短い自筆スコア(書かれているのは2ページ)として残り、明確に未完の作品として伝えられている。[1] 後世の写譜では、単に「ミサの始まり」(Anfang einer Messe)と記されることもあり、典礼での用途を意図していたことを示唆しつつも、通常文の他の楽章は何ひとつ残していない。[1]

音楽的性格

現存する範囲に見られるのは、モーツァルトの簡潔な後期古典派の教会様式に典型的な編成である。すなわちSATB合唱に、控えめなオーケストラ——オーボエ2本、ファゴット、弦(ヴァイオリンとヴィオラ)、そして通奏低音(オルガンを伴うbasso)が加わる。[1] その意味でK. 422aは、モーツァルトの華やかな宗教作品に見られる大規模で協奏的な構想というより、オーストリアにおける実用的なミサ作曲の流れに近い。断片である以上、大きな形式上の主張を行うのは危険だが、それでもこの短い断面から、合唱と管弦楽が手際よく声部配置されたテクスチュアがうかがえ、伸びやかなヴィルトゥオジティよりも、Kyrie の嘆願を明晰に届けることを目的としているように感じられる。[1]

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[1] Internationale Stiftung Mozarteum (Köchel Verzeichnis): work entry for KV 422a, Kyrie in D (fragment) — dating, scoring, and source/transmission notes.