K. 146

変ロ長調 ソプラノのためのアリア《Kommet her, ihr frechen Sünder》(K. 146/317b)

de Wolfgang Amadeus Mozart

Mozart from family portrait, c. 1780-81
Mozart from the family portrait, c. 1780–81 (attr. della Croce)

モーツァルトの宗教アリア《Kommet her, ihr frechen Sünder》(K. 146/317b)は、1779年にザルツブルクで作曲された、受難節(Passion-tide)の黙想を凝縮した小品である。作曲時の彼は23歳。弦楽と通奏低音(多くはオルガン)という編成で、オペラ的な声の即時性を敬虔なミニアチュールへと結晶させている。静かに、しかし確かに――たった1ページがひとつの「場面」に感じられるように書けてしまうモーツァルトの力量を示す、“小さな”作品のひとつだ。

背景と文脈

1779年のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756–1791)は、パリ旅行と母の死(1778)を経てザルツブルクへ戻り、コロレド大司教のもとで宮廷オルガニスト兼Konzertmeisterとして再び職務に就いていた。当地の音楽生活では、実用的な宗教レパートリー――ミサ曲の楽章、晩課(ヴェスペル)のための曲、さらに家庭内や半典礼的な場で用いられる小規模なドイツ語の信心音楽――が絶えず求められていた。《Kommet her, ihr frechen Sünder》は、まさにそうした実務的なザルツブルクの世界に属する作品である。弦楽と通奏低音を伴う宗教的ソプラノ独唱曲で、Neue Mozart-Ausgabeではカンタータおよび関連する声楽作品群に収められ、K. 146(K⁶ 317bとしても)に分類されている [1]

この曲は、モーツァルトの宗教作品の中でも演奏機会の多い定番というわけではない。その理由の一端は、ジャンルの境界に位置していることにある。アリアではあるが信心歌のように振る舞い、宗教曲でありながら劇場のような直接的で修辞的な呼びかけを借りているのだ。壮大な教会楽章でもなく、ピアノ伴奏のサロン風Liedでもない――そうした「中間的」な性格は、知名度が伸びにくい事情を説明する一方で、ザルツブルク時代のモーツァルトの日常的な宗教音楽制作を覗き込む窓として、この作品が注目に値することもまた示している。

テキストと作曲

ドイツ語の歌詞は、「Kommet her」(「こちらへ来なさい/来たれ」)という強い呼びかけで始まり、その宛先は「frechen Sünder」(厚かましい/不埒な罪びと)である。そして間もなく聴き手の視線を苦しむ救い主へと向ける(伝承上の綴りでは「seht den Heyland」となる場合もある)。つまり本作は、受難の信心を一つのアリアに圧縮したものと言える。戒め、招き、そして黙想がミニアチュールとしてまとめられているのだ。現代の参照資料では本作を《Kommet her, ihr frechen Sünder》K. 146/317bとし、1779年のザルツブルク(しばしば3〜4月に絞られる)に位置づけている [2] [3]

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編成は小ぶりだが、その意味するところは大きい。資料には、ソロ・ソプラノ弦楽通奏低音(しばしばオルガンで実現)と記されており、小規模な宗教曲のための、いかにもザルツブルク的な教会音楽のパレットを示している [1]。この編成は宮廷礼拝堂の人的・物的資源と結びついており、(1779年当時はしばしばモーツァルト自身でもあった)オルガニストが和声の骨格を支えつつ、弦が色彩と情感を添えるという上演環境を想起させる。

音楽的性格

短い作品ではある(単一楽章)が、《Kommet her, ihr frechen Sünder》は劇的な感受性に富んでいる。ソプラノ声部は、命令形の出だし、懇願の身振り、優しく言い添えるような強調など、明確な修辞的ジェスチャーで語りかけ、信心の呼びかけを類型的なものではなく「個人的な」ものに感じさせる。変ロ長調(モーツァルトが温かさと儀礼的な明澄さのために好んで用いる調)の枠内で、音楽は表面上は親しみやすく響きながらも、歌詞がもつ道徳的な「刃」を失わない。戒めるのと同じくらい、説得する音楽なのである。

この小ジャンルの中で本作を際立たせる点は二つある。第一に、モーツァルトは声楽線を(宗教的な衣をまといながらも)真の「登場人物の声」として扱い、息遣い、終止、劇的な間合いといったフレージングを、同時期のオペラ作品に通じる本能で形づくっている。第二に、弦と通奏低音のテクスチュアは、情感の素早い転換を可能にする。伴奏は、通奏低音主導の支えとなる和声(ほとんど説教口調のような基盤)から、要所の語や感情の転回点を際立たせる、より応答的な弦の書法へとすばやく移り変われるのだ。モーツァルトのザルツブルク時代に関心を持つ聴き手にとって、このアリアは、彼の宗教音楽が単なる「教会様式」にとどまらず、のちにウィーンで開花する声の表現力を育てた実験場でもあったことを思い出させる――ここではその成果が、凝縮された、心を打つ信心の一場面として提示されている。

[1] IMSLP work page with basic catalog data and instrumentation; includes NMA reference (Serie I, Werkgruppe 4, Cantatas) for K. 146/317b.

[2] Wikipedia: List of compositions by Wolfgang Amadeus Mozart (entry for K. 146/317b with date range and place).

[3] MozartProject.org compositions list (entry for K. 146/317b with proposed date range).