4声の「1つの声部」による変ロ長調のカノン(K. Anh.H 10,16)
av Wolfgang Amadeus Mozart

《4声の「1つの声部」による変ロ長調のカノン》(K. Anh.H 10,16)は、モーツァルトが32歳だった1788年ごろのウィーンに仮に位置づけられている、ごく小さな声楽のパズルの断片である。帰属は疑わしいものの、作品は18世紀後半のカノン伝統に連なる資料のなかに伝わっており、モーツァルトがウィーン最後の年月にとりわけ好んで育んだジャンルの気配を宿している。
背景と文脈
K. Anh.H 10,16は、短い4声の「1つの声部(in one)」によるカノン(つまり、1本の書かれた旋律線から4つの声部が同時に生み出されることを意図したもの)として伝承され、近年の目録では1788年のウィーン作とされることがある[1] [2]。確実な自筆譜は確認されておらず、この小品は一般に作者不詳として扱われる——モーツァルトの真作カノンと並べて掲載されている場合でさえそうである[3] [4]。
それでも提案されている年代は、1788年9月初旬に確認されるモーツァルトのカノン作曲の集中的な時期に近い。この時期、こうした小品は、学識的な対位法であると同時に、友人たちとの社交的な音楽づくりにも役立っていた。
音楽的性格
譜面上にあるのは本質的にカノンという発想そのものである。変ロ長調の簡潔な旋律が1つ置かれ、それが厳密に3つの後続声部に模倣されるよう設計され、最小限の記譜から4声のテクスチュアが立ち上がる[3]。実演では、この種の作品はたいてい、次々の入りが互いにかみ合って進む、素早い対位法的な織り目のように響く——重なり合う線を成立させるために、協和的な終止はあらかじめ周到に仕組まれていなければならない。
現存する資料が乏しいため、K. Anh.H 10,16は「主張」をもつ作品というより、実用的なカノンの練習、あるいは食卓での小品として聴くのが最も安全だろう。簡潔で、巧みに自立しており、1本の線が4声へと花開く瞬間を楽しめる力量ある歌い手によって実現されることを意図している。
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[1] MozartPortal composition page with basic catalog data for K. Anh.H 10,16.
[2] Wikipedia Köchel catalogue table entry listing Anh.H 10,16 as “Canon in B-flat for 4 voices in 1” with September 1788/Vienna placement.
[3] Digital Mozart Edition (Mozarteum): NMA III/10 table of contents listing “Canon for four voices [in B] K. Anh. H 10/16 (562a)” with score/audio links.
[4] IMSLP work page for “Canon for 4 Voices in B-flat major, K.562a,” including an authorship note and public-domain materials/recordings.




